ブーム去って温浴施設に危機感

この数年大型旅館やリゾートホテルの苦境を尻目に、日帰り温泉やバラエティーに富んだ温浴施設が一大ブームを読んでいた。しかし、昨年温浴施設のチェーン展開する企業が撤退するなど、その勢いは完全に失速している。
その理由は温浴施設の主たる利用客にひと回りし、一応の固定客化が進むと同時に、潜在需要層の底打ちが見えてきたことによるものだろう。MR力に優れた早めの決断と思える。一方で、この業界に後から参入してきた企業の場合は、今後どのように運営していくべきか大きな悩みを抱えることになりそうだ。
元々、この施設は高齢者を主なターゲットとして繁盛してきた。そしてその顧客の低年齢化を進めてきた経緯がある。ファミリーに受け入れられた頃がピークだったともいえる。高齢者は、定年などで余暇時間が多い上に、若年層の平均月収を上回るほどの年金に裏付けされて生活苦から解放されており、まさにターゲットとして最適な条件が揃っている。この高齢者層が元気に消費してくれれば、まだまだ希望が持てるはずだった。しかし、高齢者層をターゲットとしたマーケティングの賞味期限は、10年が限界だ。彼らの健康年齢と共にそのリピート率は急激に減退するのである。その結果、新たな需要の開拓に送れた企業が苦戦を強いられることになる。
しかも、高齢者層とファミリー層はお互いに相容れない顧客なのだ。理由は、経過する時間への対応能力の違いにある。ファミリー層の時間への向き合い方は、分刻みだ。それに対して、高齢者層は時間刻み。最初から噛み合うはずもない。この相反するターゲットが混在する中で、どのように運営して利益を生み出すのか。非常に難しいと思う。
そこに原油高騰や労働条件の改善など、多くの課題が持ち上がった結果、適応力がある企業は撤退の決断を下したということだろう。
果たしてこの流れは、温浴施設に留まるのだろうか?地方行政を巻き込んで、もっと厳しい現実が待ち受けていると思う。

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