農山漁村民泊と規制緩和型農林漁家民宿にみる小規模グリーン・ツーリズム政策
グリーン・ツーリズム《GT》政策の登場1992(H4)年6月、農林水産省の新政策という政策が開始されて既に20年近く経過しているのをご存知だろうか。要は、農業体験や漁業体験をすれば、民宿と同じように一般の自宅などに有料(格安)で宿泊可能になるのだ。オリンピックが東京に誘致が決まった瞬間から、再びこのグリーンツーリズムを中心とした「民泊」が注目を集めている。
本来、宿泊業は厚生省所管の規制などによって、一般の民家での宿泊は不可能であったが、このグリーンツーリズムという農林水産省が推進する不可思議な理屈で農家や漁師の自宅に宿泊することが可能となったわけだ。
この政策の被害を受けているのが、民宿やペンション経営者ではないだろうか。
そもそも、この小規模事業者を救済しようという発想が行政側に全くないことが問題だと思う。でなければ、こんな政策がまかり通ること自体ありえない。少なくとも既に存在してきた小規模宿泊施設の重点的な支援策を打ち出すことからスタートすべきだ。政治家も行政も弱者には常に薄情なものだが、まさにこの政策が良い例だろう。百歩譲って、この政策を今後も推進しようとするなら、既存の小規模宿泊業の経営者たちとの連携を図り、経営支援や設備投資への金融支援などのバックアップを充実させるべきだろう。
また、この政策には縦割り行政の問題も大きく立ちはだかっている。この政策へのクレームなり要望なりを受け入れる担当行政が明確にされていない。つまり、予め問題が起きてもたらい回しにできるようになっているとしか考えられない。
厚生省、国土交通省、農林水産省。この全く連携の余地がない行政府に一体何ができるというのだろうか。どう見ても所管の業界からのクレームを分散させるための構えなのだ。事実、今までに大手の旅行会社やホテルチェーンなどを巻き込んで、グリーンツーリズムを謳ったツアーが多く実施されてきているが、実際に民泊を実施しているのは個人レベルで努力しているところだけのようだ。「企画はするが実際にやるなら勝手にどうぞ」そんな声が聴こえてくる。
ただ、こんなことに負けてはいられないのがペンション経営者のみなさんだ。
集客の落ち込みだけでなく経営者の高齢化が進み、インターネットなどの活用に苦労しているという実態も報告されている。この厳しい状況下で、どのように取り組めばよいのか。特効薬は中々見つからない。この民泊が今ひとつのうちに何とか打開策を見つけたいものだ。