民泊について2 ”具体的な取り組み”

前回、グリーンツーリズムに代表される「民泊」についてブログにしてみましたが、今回も引き続き「民泊」について触れたいと思います。
前回は具体的なご紹介は省略させていただきましたが、ここで改めて長崎県の例をご紹介します。

長崎県の取組の一例です。
■○○牧場 体験旅行
 民泊受入軒数は、21年度の6軒から26年度には170軒に大幅に拡大予定。民泊の受入数は教育旅行
を中心に年々急速に増加し、26年度には11,500名(うち教育旅行9,840名)の受入れを見込む。

☆体験メニュー☆
◇子牛のミルク・餌やり
◇山菜採り
◇ジャム作り
◇栗拾い
◇干し柿つくり
◇銀杏ひろい
◇さくらんぼ採り
◇ブルーベリー採り
◇やまもも採り
☆泊はグループに限る

この体験型民泊旅行の企画は長崎県や農林水産省のホームページでもドキュメントが紹介されている謂わば公認のような企画内容です。
確に、体験できるメニューが列挙されていて、都会の子供達やファミリーにとっては楽しい旅行になると思います。
また一方、農家の体験型の一例では次のようなメニューと企画内容で実施されているようです。

■農家体験型
内容:わらび採り、タケノコ掘り、椎茸のこま打ち、お茶
摘み、栗拾い、川遊び、田舎万十、食事作り、竹細工など
(時期により内容は異なります。)
場所:「つばき坂」及びその周辺
客室:1部屋(収容人員5名様、水洗トイレ、洗面台、シャ
ワー室付き)
対象:どなたでもOK
時期:年末年始休業※予約が必要
宿泊体験費用:1泊朝食付き6,500円
※食事は旬の野菜を使った田舎料理やジビエ料理。
申し込み方法:電話
※各月の旬の食材を使った、具だくさん味噌汁作り体験

これらの民泊は、各地のの地方行政などが推進しており、その目的を観ると事業後継者の問題や過疎化に悩む農漁村などの対策の一環として企画されたようです。それに関する講演の資料をご紹介します。一読してください。

「農山漁村民泊と規制緩和型農林漁家民宿にみる小規模グリーン・ツーリズム政策」

日時:平成22年10月1日(金曜日)15時30分~17時30分
場所:農林水産政策研究所セミナー室
講師:中尾 誠二氏(都市農山漁村交流活性化機構)

講演要旨

わが国においては、1992年の「新しい食料・農業・農村政策の方向」以降、“グリーン・ツーリズム(以下、GT)”が農政に位置づけられ、地域活性化の手法として注目されています。そうした中で、農林漁家による民宿・民泊も各地に広がり、「地域の自然・文化・人々との交流を楽しむ滞在型余暇活動」の一環として都市住民の需要に応えています。
本報告の目的は、1)農林漁家「民宿」および農山漁村「民泊」といった用語の使われ方・法的な位置付け・規制緩和との関係を体系的に整理した上で、「規制緩和型農林漁家民宿」等の概念を提示し、2)取組事例の実態や統計から、従来一般的に理解されている「民宿」、「民泊」の境界線を見直し、「民泊」と称する適法な「民宿」を新たな概念として整理することにあります。また、3)その概念に基づく「規制緩和型農林漁家民宿」の特性を明らかにし、「小規模GT政策」ともいえる一連の緩和策を総括するとともに、今後の展開を考察します。
一般に料金を徴収して、人を宿泊させ食事を提供するには、旅館業法や食品衛生法上の許可を取得しなくてはなりません。ところが、一般的に理解されている「旅館」と「民宿」の境界は、法律や統計区分では明確に示されていません。旅館業法上には民宿を規定する条文はなく、同法に規定された旅館営業、簡易宿所営業についても、法律上の規定は最低限の基準を示すのみで、実質的には各都道府県の条例による運用がより大きな比重を占めています。
一方、1994年に制定された農山漁村余暇法で「農林漁業体験民宿」が定義され、これによって初めて「民宿」の用語が法律上位置づけられました。そして、2003年以降、全国的に規制緩和が進められ、これを利用して簡易宿所営業の許可を得た宿を「規制緩和型農林漁家民宿」と呼ぶことができます。また、こうしたGTの推進は、従来の大規模GT政策等に対して小規模GT政策と位置づけることができます。
現在ある小規模農林漁家民宿を制度的に分類すると、
〔A〕規制緩和策を利用した小規模農林漁家民宿、
〔C〕旅館業法等の許可を得ないもの、
〔B〕両者の中間に当たり、各県の民泊ガイドライン等に沿いつつ、旅館業法等の許可を得ていないものが存在します。
現在、〔B〕のガイドラインを策定しているのは12県で、その基準を満たす農山漁村民泊は相当数あり、これらが教育旅行の受入主体として注目されています。〔B〕のケースでは多くが、農林漁家の宿泊体験は宿泊部分も含めて「体験」の一環であるため「宿泊」行為にはあたらず、旅館業法等の適用外と判断して運用しています。しかし、安全面を確保する観点等から、要件の整ったものについてはできるだけ〔A〕に移行することが望ましいという見解もあり、〔B〕についてもしかるべき行政の指導を進めて行く必要が考えられます。また、都道府県によっては〔B〕と〔C〕をはっきり峻別せずに指導している地域もあることから、これら都道府県においては、指導方針を明確化することも課題です。
こうしたことから、本報告では、現状の農林漁家による宿泊体験を〔A〕に移行させるための課題を旅館業法・食品衛生法・建築基準法・消防法・ 旅行業法・道路運送法といった一連の規制緩和を整理し、これらの整理を元に「民泊」を適法化する際の課題等を検討しました。

いかがでしょうか?
この中でも講師が触れていますが、厚生省所管の旅館業法との問題が一番気になる点であることは、関係者の中でも議論されていることがわかりますね。おそらく、安倍政権の地方の景気浮揚策やTPP対策の一環としての意味合いもあるとは思いますが、既存の民宿やペンションの存在を無視しすぎているという思いが強くなってしまいます。できれば今からでも、ペンションなどとのコラボできる企画内容を検討してもらえれば、もっと利用率も上がるでしょうしその内容も実効性あるものとして今後も期待できるのではないでしょうか。

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